人待ち顔して微笑む

2011-07-10

「家にいてもムシ暑いから散歩に出かけた」
「どこへ?」
「大黒町通りから元町通りにかけて。40年以上前の風景を思い出しながら、しみじみ歩いた。……大黒町通りにはアーケードがあり、せんべい屋、和食店、ペットショップが軒を連ねていた。夜店も賑やかだったなぁ~」
「そうよねぇ」
「ブラリと本通りに入り、昔、抹茶を飲んだ店の前を過ぎつつ当時の生活ぶりを振り返ってみた。テレビは白黒、エアコンは無し……。考えてみれば、よくも生きておれたものだ」
「ホントにねぇ~」
「なつかしい記憶をたどるのはいいねぇ~。ひばりの歌の“それでも未来達は人待ち顔して微笑む”というフレーズがよぎった。ところで、その微笑って天使の? それとも悪魔の? どうしたら分かるでしょう」
「普通は天使のじゃないの?」
「そのためには条件がある!」
「?」
「勤・倹・譲だよ。これがしっかりできて生きてきた人は天使の微笑! もっとも、家庭教育がしっかりしてないとダメだがね」
「ハァ~?」「典型的なのが俺。物欲と名誉欲にかられた親父を見て育って、それが普通と思ってたから、こんなに歪んでしまった」
「アハハ 気づいただけましよ」

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