HIV感染症

2011-04-16

HIV感染症はその疾患病期により、HIV初感染、慢性感染期、AIDS期に分けられます。大部分のHIV感染者は、発症後10-15年で致死的免疫不全状態すなわちAIDS(後天性免疫不全症候群)に至ります。

○HIV初感染○
初感染では、半数以上に自覚症状があり、発熱、リンパ節腫脹、咽頭炎、発疹、筋肉痛・関節痛などがみられ、さらに下痢、頭痛、吐き気、嘔吐、肝脾腫、体重減少、口腔白苔、神経症状が認められます。診断はHIV抗体検査では陰性または保留であり、血漿HIV  RNAの検出によりなされます。症状からは通常の感冒として見逃される場合も多いですが、重篤な症状を呈する場合も、あり診断は重要です。

○慢性感染期○
慢性感染期は、初期には免疫状態は保たれており自覚症状はありませんが、免疫能が徐々に破綻して行きます。それに伴い症状が現れるため、慢性感染期は、無症候期と症候期(口腔および膣カンジダ症、子宮頸部異形成、子宮頸癌、1ヶ月以上続く発熱・下痢など)に分けることもあります。この時期には帯状疱疹も問題になります。

○AIDS期○
免疫能破綻が進行するとそれが顕在化し、重篤な日和見感染症(健康な状態では害にならないような病原性の弱い微生物が、感染者の免疫力の低下によって引き起こす病気)が合併し、いわゆるAIDS(後天性免疫不全症候群)となります。症状は合併した日和見感染症の症状が中心となります。AIDS状態では治療しないと2年前後で死に至ります。
日和見感染がなければ、抗HIV療法は非常に効果的ですが、重篤な日和見感染を発症している場合には、抗 HIV療法を試みても間に合わないことが多くあります。日和見感染症の治療も基本的に抗HIV療法で行われますが、抗HIV療法を開始することにより免疫能が急速に回復することにより感染症が悪化することがあります(免疫再構築症候群)。

HIV感染症の感染経路の基本は性的接触ですが、血液を介した感染も認められます。また通常の日常生活の範囲では感染が成立することはありません。性交渉による感染成立の頻度は膣性交の場合、男性から女性が0.1-0.2%、女性から男性が 0.03-0.09%、肛門性交による男性間が0.1-3%で、またオーラルセックスによる感染は非常に少ないと考えられていますが、可能性は報告されています。 HIV感染症は、通常の日常生活の範囲では感染が成立することはなく、性的接触が重要な感染経路になります。そのためより安全な性的活動に関する教育・自覚が必要です。性的接触に関して予防に有効だと考えられることとしては、性的関係のパートナーを減らす、正確で持続的なコンドームの使用、他の性病・性感染症の迅速な検査・治療などがあげられます。

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