トリコモナス感染症

2011-04-16

トリコモナス感染症は原虫の1種であるトリコモナスによる感染症です。トリコモナスには、膣トリコモナス、腸トリコモナス、口腔トリコモナスがあり、それぞれ感染部位に特異的な性質を持っており、生殖器に感染し病原性を示すのは膣トリコモナスだけです。

感染は性交によることが主ですが、衣服やタオルあるいは便器や浴槽を通じた感染も認められます。また妊婦から新生児への垂直感染も認められます。感染者の年齢層は他の性病・性感染症とは異なり若者だけでなく非常に幅広いのが特徴です。

症状は非常に多様です。帯下(粘液性の膣からの排出物)の増加が最も多い自覚症状で、その他排尿障害、外陰部のかゆみ、刺激感、悪臭などがあります。また膣炎を起こすこともあり、この場合トリコモナス以外の菌との混合感染が一般的にみられ、同時に感染した菌が悪臭の原因となります。 子宮膣部は感染により発赤し、“苺状”と呼ばれる所見を呈します。さらに尿道炎が1/4にみられます。バルトリン腺炎がみられることもありますが、これは合併する細菌感染によると考えらます。

トリコモナス感染の妊婦が、胎児へもたらす影響は明確ではありませんが、トリコモナス感染がある場合未熟産が増加するという報告が多数あります。トリコモナスそのものの病原性より感染に伴う膣内環境の変化が影響していると考えられ、それに伴う他の細菌感染との合併が原因であると考えられています。

トリコモナス感染症は、直接の感染症状のほか、他の疾患の発症にも影響を及ぼすと考えられています。クラミジア感染症、淋菌感染症と同様、トリコモナス感染はHIV感染リスクを増加させるとされており、卵管炎などの骨盤内感染症や子宮頸癌の患者にトリコモナス感染が多いという報告があります。 トリコモナスは他の細菌、ウイルスなどを子宮内へ運ぶvectorとして働くことが、他の感染症を引き起こす原因になっていると考えられます。

治療薬はニトロイミダゾール系薬剤(メトロニダゾールなど)の経口投与が必要ですが、自覚症状の改善が早い膣座薬による局所療法が併用されることもあります。

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