子宮付属器炎

2011-04-16

-子宮付属器炎とは-
卵巣と卵管を総称して子宮付属器と呼び、この子宮付属器に起こる炎症を子宮付属器炎といいます。
付属器を越えて炎症が骨盤腹膜内に広がると骨盤腹膜炎、さらに腹部全体に広がると汎腹膜炎になります。

-原因-
ほとんどの場合、細菌などの感染によります。
子宮付属器は子宮内腔、腟を介して外界とつながっているため、外界から病原菌が進入する可能性があります。
子宮付属器における局所の免疫機能が低下するか、あるいは、病原体の進入が過剰となった時に子宮付属器炎が起こります。

不潔な性行為や性感染症の患者さんとの性行為などで起こりやすく、子宮内操作を伴う医療行為、子宮避妊リング、卵巣チョコレート嚢胞、悪性の子宮腫瘍なども誘因になりえます。

原因となる病原菌には、性感染症としてクラミジア・トラコマチスと淋菌、一般細菌として大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、バクテロイデスなどがあります。
これらが混合感染している場合が多いようです。膿汁がたまって腫瘤を形成したものを瘤膿腫、膿瘍といい、卵管にできるものを卵管瘤膿腫、卵巣にできるものを卵巣膿瘍と呼びます。

-症状-
下腹部痛と発熱が主な症状です。
腹膜刺激があると下腹部を押して離す時に強い痛みを感じます。
気分不快、嘔吐などの消化器症状を伴うこともあります。

-検査と診断-
内診と血液検査が重要です。

瘤膿腫を伴うものでは画像診断が有用で、超音波断層法、MRI、CTなどにより子宮付属器に膿状の内溶液を含む袋状の構造物が認められます。

内診では付属器の圧痛、熱感、子宮頸部の移動痛などが認められます。

血液検査で白血球の増加、CRPの上昇、赤沈亢進などの急性炎症反応が認められます。

腹腔鏡が診断に有用なこともあります。

原因となっている病原菌の特定には時間を要するほか、適切な検体が採取できず不可能な場合も少なくありません。

-治療-
急性期は薬物療法を原則とします。
軽症では外来での経口抗生剤の投与でよいのですが、中等症以上では入院安静とし、抗生剤を点滴静注するなど強力な治療を行います。
一般に広域感性(有効菌種の範囲が広い)のペニシリン系やセフェム系の抗生剤を選択します。
クラミジアの複合感染が疑われる場合には、テトラサイクリン系の抗生剤やニューキノロン系の抗菌製剤を併用します。

瘤膿腫や膿瘍を伴うものは、炎症がある程度おさまった段階で外科的処置を行います。
手術の方法は付属器切除術からドレナージ(膿汁を排出させる)だけのものまで様々です。

子宮全摘術が必要な場合もあります。
患者さんの年齢、今後の出産希望の有無、基礎疾患などを考慮して術式を決定します。

経過は、さまざまの要因により決まってきます。
通常は適切な治療により治りますが、治療の開始時期が遅れるなどして重症化すると敗血症になることもあります。
治ったあとに癒着が残ることも少なくなく、その結果、将来、不妊症子宮外妊娠を発症することがあります。

-子宮付属器炎に気づいたら-
なるべく早く婦人科を受診することが望まれます。

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