心が和む塩ラーメン屋
2020-12-10
(先月号の続き)
「まともな店はないの?」
「そうだな。15年前の話だが…。塩ラーメン屋。」
「若干の期待。」
「そこの塩ラーメンは、スープが本当に透き通っていてキレイな輝きを発している。」
「え~!?」
「それと細メンとの絡み合いが、もう芸術だ。」
「ワォ~。」
「通常はラーメンにはネギが乗っかっているところを、その店はすり胡麻と水菜。」
「それも見た目が良いわ。」
「もちろんチャーシューは、脂身部分がトロリとしていて赤身はフワリとしている。」
「最高ね。」
「ラーメンがくると、まずスープの香りを楽しんで…。」
「レンゲで一口すするのね。」
「それからメンを食べ始めたら、もう止まりません。」
「素敵…。」
「でもね。」
「何?」
「そこの大将って、日が沈むと酒を呑まないといけない体質なんだ。」
「ギョ!!」
「しかも酔うと怒りっぽくなる。」
「最低。」
「客がいても、フロアーを手伝っている実母に“おい!早く丼を並べろ!”とか怒鳴るので店内は…。」
「ピリっとするわ。」
「常連さんは慣れているから、完全無視してビールをゴクリ。」
「あらま。」
「新規の客には、そのお母様が笑顔で“ゴメンね、これで許してね”とか言って、大人にはドリンク子どもにはラムネ菓子を配っている。」
「和むわ。」
「しかし、ある日突然閉店した。」
「病気にでもなったのかしら?」
「残念…。」
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